クラゲを見つめる彼女の横顔

クラゲっていいな。なりたいな。
海にたゆたう感じとか、
とけて消えてしまう感じとか、
難しいことなんて考えず、
ただ受け容れてそこにある感じが、
とっても羨ましいの。

 

仲良くしていた女の子が、
とてもクラゲが好きで、
私たちの避難場所の一つの理科室には
何時も色んな生き物がいて、
そのうちの一つがクラゲだった。

 

籠の中の鳥だった私たちは、
外に飛び出したくて仕方なくて、
束の間、別の世界が見えるような
そんな場所が好きだった。

 

私は国語の先生が好きで、
彼女は理科の先生が好きだった。

 

とてもキレイな子だったので、
彼女が海に行きたいと言えば連れて行ってくれた。

 

水面に輝く海蛍や揺らめくように浮かぶクラゲ。
そして優しい眼差しを向ける理科の先生。

 

でも彼女の目には
何も映っていなかったのかも知れない、
海蛍もクラゲも先生も私も。
何かを通して此処ではない何処かに気持ちを馳せてただけ、
今ならそう思う。

 

それでも、私は、そんな彼女の横顔を見るのが好きだった。
長い睫毛がまたたくのを見るのが好きだった。
そういえば、人の横顔ばかり見ているかも知れない。
私を見つめてはくれない人を追うのがクセのようになってしまった。

 

クラゲを見ると、そんな記憶が断片的に戻る。
だいぶ薄れてしまったけれど、それでもやっぱり大切な記憶の欠片。

 

私を構成する確かに大事な一つ。

 

ありがとう。たくさんありがとう。

辛かった時もあったけど、
出会えたことを感謝してる。
今度出会うときは二人ともクラゲだったらいいね。

 

それまで、どうか、元気で幸せに過ごしていてね。