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回想という名の自分との折り合い

「かおり」という名前の人がいた。


高校の時はヤンチャだったことを匂わす空気感は、
正直、ぜんぜん好みじゃなかった。

 

だから友達が嬉しそうにお喋りするのを横目に
とても冷ややかに見ていた。ふぅんって。
あちらも上から見下ろしているのが分かっていたから、
ますます口をきく気になれなかった。

 

本当のところ、きっかけはよく覚えていない。
たぶん、かおりが作った詩集を友達が持っていて
それを横目でみたんだろう。
そんなこともなければ手にも取らなかったろうから。

 

私は気が回らないし、マイペースだったから、
気がつくと相手は不機嫌で、マズイと思う頃には相当怒っていたし、

話し掛けても無視をされることが殆どだった。
次に声を掛けてもらうまで3ヵ月というのは全然よくある出来事。
それから放っておかれるのが酷く怖くなった。

 

かおりには忘れられない人がいた。未練タラタラだった。
結局、私がみた詩の殆どはその人とのことだった。
普段の会話でも、その女性の話を聞く時間が長かった。
今思えば自虐的な時間。

唯一、私が描かれたものは不採用の中に一つだけあった。「日に日に存在は大きくなっているけれど、でも子ども過ぎて抱けない」
そんな詩を目にしても何も言えなかった。現実は残酷だった。

 

私は大きなヌイグルミだったのかも知れない。

 

そして。
舞台に立てなくなった理由は「かおり」にある。
実家暮らしになったのは、その人の密告のせいだ。

 

経済的に困窮をきたしていたが、
どんな手段を使っても板に立ちたかった。
劇団として最後の舞台だったからだ。
職業問わず手っ取り早く稼ぐ方法を考えていた。
死ぬ気でやればどうにでもなると思ったから。
それをよく思わなかった かおりはバラしてしまった。
両親に隠れて演劇活動を続けていたこと、すべてを。

「いい加減、早く落ち着いて、結婚しなよ」

余計なお世話だと思った。

 

「でもあれだね、昔きいた両親の話、
 かまってちゃんにアリガチなネタかと思ってたけど、本当だったんだね」

続けて、かおりはこう言った。
「まさか実家に帰るなんて…もう会えない…んだよね…?」

 

そう、会えないよ。
もう会いたいとも思ってないよ。
電話番号もこの話のあと、すぐに消したよ。
それなのに存在までは忘れられないんだから、
我ながら傑作。笑っちゃうでしょ?


今なら分かるよ。
子どもなのは、たぶん、私だけじゃなかった。
気持ちが空回りしすぎてすれ違って、
本当に大切なものを探り合って触れ合うこともできなかった。幼過ぎるあまり傷つけ合うことしかできなかった日々。


ずっと前、何度か、名前とPNで検索したよ。
でも、どちらも辿り着けないで終わった。
でも、それで良かったって思ってる。

 

私には決して触れさせてくれなかった火傷の痕
受け止めてくれる人と一緒なのかな?
どうかずっとずっと幸せでいてね。

 

偶然にすれ違った時、
私が笑顔で憎まれ口たたけるぐらいに。